人工衛星運用・Synspectiveへ転職の動機は?受託ではなく挑戦的な自社サービス開発へ

on 2021.06.11
人工衛星運用・Synspectiveへ転職の動機は?受託ではなく挑戦的な自社サービス開発へ

今回は自社で人工衛星を打ち上げ、そのデータを活用したソリューションを提供する株式会社Synspective地上システム部のゼネラルマネージャー、鈴木 豊さんにお話を伺いました。会社のことはもちろん、人工衛星のデータの可能性や、鈴木さんのこれまでのキャリアやSynspectiveが求めるエンジニア像について伺いました。

ライター:岡田星羅 取材・編集:平田提

ーーSynspectiveさんの事業内容を改めて教えてください。


鈴木さん:大きく分けて2つの事業があります。1つ目は自社で打ち上げた人工衛星から取得したデータの販売。2つ目はそのデータをソリューションとして顧客へ届けることです。

2つの事業を推進するために、弊社にはバックオフィスの他に5つの部門があります。

人工衛星を作るハードウェア側の衛星システム開発部門、衛星データを解析し顧客の課題を解決するソリューションを開発する部門、開発したソリューションを販売・提供する部門、データを販売するビジネス部門。そして私が所属する、地上システムを開発する部門です。

ーー地上システム部ではどんなお仕事をされているんですか?

鈴木さん:地上システム部の役割は大きく2つです。人工衛星を運用すること、そして人工衛星から得たデータを提供することです。地上システム部のメンバーは人工衛星の運用システムやデータ管理するシステムの開発を行なっています。

ーー 先日(2021年4月26日)のE3ミートアップ でもご一緒した、スカイゲートテクノロジズさんと連携されることはありますか?

鈴木さん:弊社は衛星と通信するための地上局と呼ばれる、地上アンテナ設備を持っていないのでスカイゲートテクノロジズさんのようなサービスを提供している企業に協力をお願いする必要があります。実際にそういった地上局を時間借りでレンタルするというサービスを活用し人工衛星の運用を行っています。

ーー人工衛星の運用は具体的にはどんなものなのでしょうか。

鈴木さん:顧客のオーダーを人工衛星のデータを使ってどう実現するかを考え、運用することが主な業務です。まず顧客が取得したいデータを把握し、それを取得するための人工衛星の軌道を検討します。そしてどのタイミングで衛星にコマンドをアップし、いつデータをダウンロードするのか綿密な計画を立て、自動的に運用するシステムを作っています。

ーー”自動的に運用”というのがポイントのようにお見受けしました。

鈴木さん:そうですね。いま弊社で動かしている人工衛星は一機だけなので、自動で、しかも”できるだけ早く”観測できるようにしています。

ただ今後衛星を増やしていくと、顧客の取得したいデータを、どの人工衛星で取得するのが一番適切か考えて運用していく必要が出てきますね。観測計画の最適化は今後の課題になってくると思います。

ーーなるほど。編成やキャスティングのような……観測計画の最適化はどう進められていくんですか?

鈴木さん:限られたリソースの中でいかに効率よく観測していくかを考えるのが、ポイントです。

弊社が開発、運用している衛星は合成開口レーダー(SAR)という技術を利用した「SAR衛星」です。SAR衛星は、マイクロ波を発射しその反射を観測するので、夜間や雲がある環境でもデータの取得が可能です。

衛星写真などで広く知られている衛星は「光学衛星」と呼ばれ、これは太陽光の反射を利用するため、夜間や悪天候だと観測できないことがあります。

ここだけお聞きになるとSAR衛星の方が優れていると思われるかもしれませんが、SAR衛星は自分自身で電波を発生するため、他の衛星に比べて電力の消費が大きいです。その点に十分配慮した上でいかに効率的に観測を実施するかが課題の1つとして挙げられます。

※以前Synspectiveの人事・芝さんにお伺いした記事も合わせてお読みください。

ーー人工衛星で取得したデータはどう活用されるんでしょうか?

鈴木さん:都市開発に活用するようなデータがイメージしやすいと思います。例えばある地点を複数回観測すると、地表の高さがどれだけ変化しているかをモニタリングできます。その結果を分析すれば、例えば地滑りが起きそうなところを事前に予測できます。この予測結果をもとに「そろそろ補強の工事が必要だな」と考え、必要な対策を打つことができます。

弊社は「Flood Damage Assessment Solution」という洪水発生時の浸水被害を評価するサービスも提供しています。洪水が起こったとき、保険業界の方は被害の規模を調査し、適切な対応を行います。これまでは人が実際に現地に赴いて調査していましたが、人工衛星のデータを活用すれば発生前後でのデータを比較し、洪水が起こった範囲をより迅速に特定することができます。

ーーなるほど。ハザードマップの作成にも活用できそうですね。

鈴木さん:そうですね。過去のデータを時系列で蓄積することが可能なため、膨大なデータを集めることで将来的には災害予測などにも活用できると思います。

政府や自治体の土地開発や治水、防災の観点から人工衛星のデータが使われる事例は多いと思います。

ーー大学では光赤外線天文学を専攻されていたとか。

鈴木さん:そうなんです。望遠鏡を使って星や銀河を観測し、画像処理で分析する研究をしていました。

――鈴木さんは小さい頃から宇宙が好きだったんですか?

鈴木さん:もともと、特別宇宙が大好きで光赤外線天文学を専攻したわけではないんです。

――そうなんですか!?

鈴木さん:はい。ただ大学進学を考え始めたタイミングで、祖母によく連れて行ってもらっていたプラネタリウムが好きだったことを思い出して。その流れで「天文学をやってみるか」と軽い気持ちで決めました。学んでみると、自分なりに考えて研究するのが楽しくなっていきました。

ーーそうだったんですね。大学時代で印象に残っている思い出はありますか?

鈴木さん:大学は鹿児島だったのですが、山奥の牧場のど真ん中に設置した研究室の望遠鏡で観測していました。ハードウェアのトラブルが起きたら自分たちで業者を調べて呼ぶなど、学生自身が運用することで学べたことが多くあったと思います。先生から与えられた課題をこなすだけではなく、実際に自分たちで考えて進めることができたのが良かったです。

ーー大学卒業後はどういったキャリアを?

鈴木さん:大学卒業後はソフトウェアのエンジニアをやっていました。会社には宇宙関係の仕事もあったんですが、私自身の仕事は宇宙とは関係の無い分野が多かったです。基本的には受託開発の仕事で、研究所や企業の研究部門に常駐しながら開発をしていました。スパコンや研究者向けのプライベートクラウドの運用、自動運転の基盤システム開発などを担当していました。

ーー受託開発から、自社サービスを運用するSynspectiveに入ったのはどういった経緯だったのでしょうか。

鈴木さん:受託開発の会社って、自分で自分の作ったものに責任を持てないことがあるんです。「ここからここまではやりますが、ここから先はやらない」という契約の中で仕事をしていて。責任の範疇は会社や仕事の関わり方にもよるので一概には言えないのですが、自分にはそのスタイルが合っていないと思っていました。

そういった思いが強まっていったので、自社サービスを作っていて、のびのびやれそうな会社を探しました。転職活動では業界は幅広く見ていたのですが、転職のエージェントからSynspectiveを紹介され、事業と雰囲気に惹かれて入社を決めました。

ーー具体的に惹かれたポイントを教えてください。

鈴木さん:まず、人工衛星のデータをビジネスに役立てるという事業面が魅力的でした。宇宙のデータが生活に活用されている実感が私自身も入社前はなく、そこがチャレンジングで面白そうだと思いました。あとは会社の雰囲気ですね。まだまだ小さい会社なので、「自分たちができることをとにかくやる」という雰囲気で、のびのび仕事ができそうだと感じました。

ーー鈴木さんがこれからお仕事で挑戦したいことを教えてください。

鈴木さん:人工衛星の運用の自動化、そして最適化ですね。人工衛星を増やしたとき、やはり手動での運用には限界があります。あとは自分たちが作っているシステムのプロダクトマネジメントに挑戦していきたいです。最適なものを最小限の労力でつくっていけるように、チームの体制も強化していく予定です。

ーー現在、地上システム部門は何人チームですか。

鈴木さん:社員は自分を含めて9名、業務委託が3名です。海外出身のメンバーはうち4名います。

ーーこれから事業を大きくしていく上で、どのような方と一緒に仕事をしたいですか?


鈴木さん:人柄やマインドとしては、「自分で考えて動くのが好きな人」ですね。メンバーは増えてきているものの、まだまだ全体を細かく見切れていないのが現状です。もちろんざっくりとした指示は出すのですが、その指示をもとにメンバー間で議論しながら日々仕事を進めてもらっています。なので、そういう進め方を楽しんで、自分から主体的に動いてくれる人と一緒に仕事できたら楽しいですね。

またスキルとしてはバックエンドの知識があり、プロダクトの運用までカバーできる方を今求めています。例えばサービスのテクニカルサポートの運用をしたことがあるという方もあてはまりますすね。ユーザーや顧客からの質問や要求を効果的に反映できるように仕組み化して、良いプロダクト作りに活かしていきたいです。

衛星地上システム開発のエンジニアや衛星運用のマネジメントなど、宇宙に関わるお仕事をされてきた人にももちろん来ていただきたいです。




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