企業インタビュー
on 2021.06.16

自衛隊→freee→宇宙ビジネス…キャリアの共通点は?スカイゲートテクノロジズCEO栗津昂規さん

自衛隊→freee→宇宙ビジネス…キャリアの共通点は?スカイゲートテクノロジズCEO栗津昂規さん

2021年4月26日のE3ミートアップに登壇された、スカイゲートテクノロジズ株式会社代表取締役 CEO・栗津昂規さんに改めて宇宙と地上をつなぐ事業やこれまでのキャリアについてお話を伺いました。自衛隊の通信部隊、freee株式会社での会計の仕事と、現職との共通点とは?


ライター:岡田星羅/聞き手・編集:平田提

宇宙のデータを地上で受け取るアンテナを増やしていく

――いきなりですが、栗津さんは「宇宙ビジネス」という呼び方に違和感があるのだとか。


栗津さん:そうなんです。宇宙って我々がいる空間のことも含まれているし、たとえば「山ビジネス」や、「海ビジネス」とはあえていわないじゃないですか。それに今後、宇宙の存在やデータはより一般的になっていくでしょう。それを踏まえると、「宇宙ビジネス」という呼び方には違和感があります。

電力や光回線のような新しい時代のインフラをつくる意識で仕事に取り組んでいるので、海や空と同じように一般の方にも宇宙が身近になるといいなと感じています。

――改めてスカイゲートテクノロジズさんの事業について教えてください。

栗津さん:メインは、クラウド地上局プラットフォーム事業です。地球と宇宙の通信ギャップを埋めるためのプラットフォームを作っています。

「通信ギャップを埋める」というのは、人工衛星や宇宙船など地球外のデバイス・ビークルと地上側を接続し、地上側の人たちが宇宙からのデータを気軽に使えるようにすることです。

――宇宙からの通信を受ける、地上側を整備していくお仕事なのですね。

栗津さん:宇宙ビジネスと呼ばれる領域には夢があります。飛行機を作っても飛行場がなければ飛行機を飛ばせないのと同じように、宇宙ビジネスでも、地上側のプラットフォームがないとだめなんです。

人工衛星のデータの受け皿として、地上にアンテナを立てる。それにより宇宙と地球とのギャップを少なくし、データの流通を潤滑にしていくのが私たちのビジネスです。

――アンテナを立てるというのは、どのくらい大変なのでしょうか。

栗津さん:宇宙のデータに可能性があると言われながらもアンテナを作る領域はまだまだブルーオーシャン。というのも、やっぱり大変だからなんですよね。他の人がやりたがらないくらいには大変だと思います。

だからこそ、ビジネスチャンスなんです。アンテナは土地を確保し、アンテナを設置し、回線を引き込んで、定期的に保守をするという事業です。手間も時間もかかります。

あと、無線の免許を取るのが非常に大変なんです。アンテナの局ごとにとる必要があったり、国ごとに法律が違ったりします。実は国を2つ、3つまたいで調整する必要がある場合も多いんです。

他にも、いろんな機材や電波が地球の周りをぐるぐる飛び交っているなかで、相互に影響を与え合わないように調整をする必要があります。それを国をまたいで調整していくのは骨が折れる作業ですね。

宇宙のデータが持つ可能性。精細なデータが人の生活を豊かにする

――人工衛星から受け取ったデータは、ビジネスでどう活用されていくのでしょうか。

栗津さん:いろんな活用の仕方があります。1つ具体例を挙げると、先日(2021年4月26日)のE3ミートアップでもご一緒した、Synspectiveさんのような企業ですね。

Synspectiveさんでは人工衛星を作り、打ち上げて人工衛星からのデータを成形したり他の組織・企業に提供されたりしています。人工衛星はレーダーで地表や都市の構造物の変化を捉えられます。地図を作るには、昔だったら測量したり、今だと航空機を飛ばしたりする必要があるんですが、それってかなりコストがかかるんですね。飛行機をしょっちゅう飛ばせる訳でもないですし、晴れてる日に年に1回飛ばすぐらいが精一杯。

しかもその間に車線が変わったり橋ができたり、地上は日々変化しています。今は人力やスマホの位置情報を活用して変化を追っていますが、あまり綺麗に撮れない。

ところが人工衛星なら空からまるっと街を撮ることが可能です。さらに人工衛星は地球の周りをぐるぐる回っているので、定期的に精細な地図を更新することもできます。

精細な地図があると、精細な物流計画や自動運転の地図などができるので、物流そのものに大きな効果を及ぼします。

ーー正確なデータが及ぼす影響は大きいのですね。

栗津さん:そうなんです。他の例も簡単に挙げると、人工衛星のレーダーでビルの形や変化で不動産の建築状況が分かります。そうすると、例えば5Gのアンテナを立てるのに最適な場所がどこかがすぐ分かるんです。

――街をよりリアルタイムで観察できるんですね。

栗津さん:まさにその通りです。宇宙から眺めたデータでできることはまだまだたくさんあります。

都市や地域全体をモニタリングできる手段を持てるのは大きいと思います。宇宙は地上を広く俯瞰で見られて、国境を簡単に超えることができる。それが地球規模の課題解決へ繋げられると信じています。

自衛隊からfreee、そして宇宙ビジネス…キャリアの共通点とは

――ところで粟津さんの最初のキャリアは防衛省だとか。

栗津さん:そうなんです。通信部隊でアンテナを扱っていました。

――そもそも防衛省・自衛隊に入ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

栗津さん:大きく2つ理由があります。

もともと大学のときに別のビジネスをやっていたのですが、東日本大震災の影響で会社の仕事が無くなってしまい、そのタイミングで被災地でボランティアをしていたんです。そんなとき、自衛隊の人がアンテナが無いところで電話をしていたのに驚きました。そして、それを技術的に知りたいと思った、という好奇心が1つ目の理由です。

また会社をやるうえで「人や組織をどう考えていったらいいのか」と悩むことがその当時は多く、自衛隊がそれを学べる組織なのではないかと思えたことが2つ目の理由です。

――なるほど。その後はなぜ会計ソフトのfreeeへ転職されたのでしょうか。

栗津さん:自衛隊はとても面白い組織でした。ただ有事のときに活躍するので、日常生活に価値を届けることが難しいと感じていました。それで事業会社で顧客に価値を届けたいと思うようになったとき、お声がけをいただいたのがfreeeで。自分が会社をやっていたとき見積や請求の処理が大変だった経験から、世の中に必要なプロダクトだと感じてfreeeへの入社を決めました。

――freeeから現在のお仕事に移られたきっかけは?

栗津さん:freeeの仕事の傍ら、副業を通して世界中で人工衛星を作る会社が増えていると知りました。その一方でアクセスポイントとなる地上局が足りていなかったり、古いままの地上局を使ったりしている課題も目の当たりにしました。

「なんで人工衛星が増えているのに、アンテナを立てないんだろう?」と不思議に思ったことが、スカイゲートテクノロジズを起業した原点です。

――防衛省で災害時に通信アンテナを立てたり、freeeのように企業の会計を支えたり、人工衛星のデータの受け皿となる地上局を建てたり……粟津さんは共通して社会のインフラにずっと興味があるように感じます。

栗津さん:そうですね。自分の志向性は生活の基盤に寄っていると思います。

スムーズな会計処理と経営の見える化を実施して初めて、ビジネスが前に進む。ちゃんとした地上局があって初めて、人工衛星のデータが地上に届き、そのデータが生活を豊かにする。社会に必要だから自分がやらなければ、という強いモチベーションがあります。

自分の書いたコードが宇宙とつながる。0~9のレイヤー全部のエンジニアが必要

――宇宙には小さい頃から興味があったんですか?

栗津さん:小さい頃から宇宙は好きでした。もともと母親が宇宙が好きで、宇宙飛行士の毛利衛さんの本や、宇宙の図鑑などをよく買ってくれました。それを読んで宇宙に関わる仕事への憧れはありましたが、高校ぐらいで「宇宙を仕事にする人はヤバい」と気がついて。宇宙飛行士をはじめとして、みんな頭が良くてすごい人たちばかりじゃないですか。

――それがいまや粟津さんも宇宙の仕事をされているわけですよね。

栗津さん:そうですね。小さい頃から好きだった宇宙に関わる仕事ができて嬉しいです。今もNetflix の「マイリスト」は宇宙の映画ばかりです(笑)。

――そうなんですか。特に好きな映画はありますか?

栗津さん:『オデッセイ』(原作『火星の人』)ですね。 

――いいですね! 主人公役のマット・デイモンがジャガイモをひたすら食べて生き延びるのが印象的でした。

栗津さん:いずれ『オデッセイ』みたいに、人類は月の次は火星に順調に進出していくと思うんです。そのとき、宇宙と地上の通信を繋ぐ地上局は大事になってくる。スマホアプリで人工衛星のデータを使いたいと思ったとき当たり前にダウンロードできるように、インフラを整えていきたいと思っています。

――ところで粟津さんはご自身でコードを書くこともあるんですか?

栗津さん:はい。今もコードを書いています。

――プログラミング言語としては何を?

栗津さん:Typescript、Python、C#など必要に応じていろいろ書きます。プログラミングは大好きです。

――粟津さんはコードを書くCEOなんですね。今後の事業や展望についても教えてください。

栗津さん:直近では、世界中にアンテナを増やしていきます。東京に限らずいろんな都市に立てていくのが、次の5年です。自分のつくったコードが誰も知らない秘密基地のようなところに持っていかれて動いているのって本当にエンジニアとしてはワクワクすると思うんですよ。 

中期的には、アプリケーションの開発を進めて、取得したデータを一番速く、分かりやすく提供できるようにしたいと思います。

宇宙ビジネスというとロマンある領域だと思われることが多いですし、実際そうでしょう。でもビジネスとして現実的に魅力的なマーケットですし、これから確実に世界が変わる分野に直接関われる醍醐味があります。

――今後事業を進められるにあたって、新しくメンバーとして来てほしいのはどんなエンジニアですか?

栗津さん:弊社のエンジニアリングはよく「0から9までのレイヤー全部やる」って表現しているんです。低いレイヤーは土地を見つけて、光ファイバーを通して周囲のどんな電波が飛び交っているのか調査して、通信システムを構築するデータセンタエンジニア。

中間のレイヤーは、信号処理のエンジニアで、高いレイヤーのエンジニアはサーバサイドエンジニア、Webやダッシュボードのデザイン、API設計などをするフロントエンドエンジニアですね。

――本当に多様なエンジニアの方が関わってお仕事されてるんですね。社員数は現在何人ですか?

栗津さん:いまは正社員が3名、業務委託が10名です。経歴もさまざまで、低いレイヤーですと某モバイル通信会社出身の人がいます。真ん中のレイヤーは日本人がいなくて、無線回路や高周波の信号処理をやってきたエンジニアです。フロントエンドやサーバサイドエンジニアはいろんなIT企業出身の人たちです。

――みなさんどんな働き方をされているんでしょうか。

栗津さん:働き方はその人に合わせて柔軟なやり方が選べるようにしています。リモート・オフラインどちらをメインにするのも自由です。コミットの仕方も正社員・業務委託あるいはフルタイムかどうかも選択してもらえます。勤務時間も自由ですし、東京以外で働いている人もいます。いずれ世界中からジョインできるようにしていきたいと考えています。2021年の5月6日にオフィス移転しました。JR代々木駅からすぐなので便利です。

――どんなマインドを持った人に来てほしいですか?

栗津さん:そうですね、2つあります。1つは、新しい領域に挑むことを面白いと思える人。弊社の事業はベストプラクティスがあるわけではない。Qiitaで調べてもなかなか回答が出てきません(笑)。そういう世界でドキュメントを読み解いて深堀りするのが楽しめる人がいいですね。 

2つ目は、コミュニケーション好きなこと。スカイゲートテクノロジズでは異なるレイヤー、異なる言語、プロトコルで仕事をします。コミュニケーション好きな人こそ真価を発揮できると思います。