リモートワークの在り方を変えるサービス。「Remotehour」のファウンダー・山田俊輔さんに訊く

on 2021.01.15
リモートワークの在り方を変えるサービス。「Remotehour」のファウンダー・山田俊輔さんに訊く

E3のメディアではメンバーの皆さんだけでなく、企業や社外のエンジニア、スタートアップの皆さんにもお話を訊いていきたいと考えています。
今回インタビューしたのは「 Remotehour 」の山田俊輔(やまだしゅんすけ)さん。「Remotehour」は相手がオンラインの状態が分かり、1対1のビデオチャットなどもできるリモートワークに特化したサービス。山田さんは独立後、単身アメリカに渡り、類まれな行動力で多くのサービスを立ち上げ続けてきました。これまでの開発の軌跡について、Remotehourを使ってお伺いしました。

ライター:平田提

英語は話せない、プログラミング未経験で単身アメリカへ

――山田さんはもともと会社に勤めてらしたんですよね?

山田さん:はい。起業したい気持ちは大学の頃からあって留学生の友達と一緒に事業を興したりしていましたが、卒業後はソフトバンクに入社して1年ほど営業をやっていました。最初はショップで携帯を売っていましたよ。

――なぜソフトバンクを辞めようと思ったのですか?

山田さん:率直に言うと「起業したい」「夢がある」という綺麗な理由ではなく、ソフトバンクにいるのがつらくなって……。当時自分の隣に課長の席があったのですが、20年くらいかけてその席を目指すような、先が見えることが絶望的でした。彼らには彼らの幸せの定義があると思うんですけど。ただ自分は世界で通用するものを作っていくことに興味があったので、思い切って辞めることにしました。

――そのあとしばらくは無職だったんですか?

山田さん:4月ぐらいに辞めて、有給消化をしていました。最初は取り敢えず営業代行でもしようかと思っていたのですが、それだと今までと変わらないなと思って。何か変えないといけないと思ったときに、たまたま知り合いがシリコンバレーの様子を伝えてくれました。ビザは3カ月だったら行けるということを聞き、2015年にシリコンバレーへ渡りました。

――なるほど。そのときから英語は話せたのですか?

山田さん:いえ、全然。実は今もあまり話せません。ただ、学生時代に興した事業も英語系でしたし、そういう意味では他の人よりも英語に対して苦手意識はないかもしれませんね。

―― noteの記事 も拝見しました。最初はたくさんサービス開発をし続ける日々だったそうですね。

山田さん:もともと起業してみたくて渡米したのですが、そこでDropboxとかPinterestなど、普段使うサービスが生まれていることに感動し、ぜひアメリカでやりたいと改めて思ったんです。
主戦場で戦うためにはソフトウェアを作らなければいけないのでエンジニアリングを始めたのですが、すぐには当たらず。プロダクトをひたすら作り続けました。もし一発目から当たっていたらそのプロダクトをやっていたと思います。
毎回成功するつもりでやっているけれど、毎回失敗したから、たまたまいっぱい作ったという感じです。

――折れないところが凄いですね。

山田さん:逆に折れる理由がなかったんですよね。次に進むのは当たり前でした。辛かったときもありましたし、全然才能がないと思ったこともあったのですが、辞めようと思ったことは一度もありませんでした。

――すごい。プログラミングはどうやって学ばれたのでしょうか?

山田さん:学生時代に少しHTMLを触っていたぐらいで、他は完全に独学です。
最初に作ろうと思ったのは口コミサイトだったのですが、それはRuby on Railsのチュートリアルを3周くらいしてプロダクトに落とし込みました。無職なので時間はありましたからね。

――そうやって作り続ける日々で言語を習得していったんですね。

山田さん:やっぱり自分が作りたいものを作るのが、プログラミングを学ぶ上で一番良かったのかなと思います。

――起業したいという思いがずっとあったということでしたが、どんな事業をしたいというイメージはあったのですか?

山田さん:自分の人生を変えたと思っているのが、スティーブ・ジョブズの自伝です。彼の人生や死生観に感銘を受けました。同じ一度の人生なので、彼のように、なんなら彼を超えるものを作ってみたいと思いました。ジョブズの影響が大きかったので、起業をする上で、ハードウェア、ソフトウェアでの起業が念頭にありました。

自分にしか作れないものを。Remotehourの始まりについて

――noteに書かれていた

という言葉はすごく良いなと思ったんですが、これについて改めて教えていただけないでしょうか。

山田さん:「自分の作りたいもの」「自分の欲しいもの」「自分にしか作れないもの」の3つがあるとします。
「自分の作りたいもの」を作っている段階では、なんとなく作れそうなものを作っていることが多いのであまり良くない。
「自分の欲しいもの」を作るのは大前提ですが、結局欲しいものって既にあふれているんですよね。例えば、FacebookやTwitterを使っているから同じようなものを作れば良いということではないと思う。「自分にしか作れないもの」が大事だと思うんです。

――なるほど。そこからさらに自分にしか作れないものを探すのは、山田さんはどんな過程で進められたんですか?

山田さん:ものを作ることについて、自分は2つ定説があると思っています。
1つ目は、現在あるものの10X(10倍)良いもの、もしくは全く違うものでなければいけない。Uberはタクシーの10X速いですし、Airbnbもそうです。既存の10Xレベルのもの、もしくはまったく新しいものを生み出さなきゃいけないというのがあります。

2つ目は、アメリカと日本では求められるものが違うということ。
日本の場合、プロダクトの中身よりも「誰がどううまくやるか」にフォーカスされがちです。これは土地柄もあります。東京に人口が集中しているので、趣味嗜好ががっちりと捉えやすく、プロモーションが打ちやすい。マーケティングが上手い会社が成功しやすい。そういうのはアメリカでは通用しにくい。

では何が一番大事かというと、「自分が一番その事業にふさわしいファウンダーであること」です。
例えばラーメンEC「 RamenHero 」のファウンダー・長谷川さんは、本当にラーメンがずっと好きで。そして日本人で、起業という舞台に立つ人の中で、RamenHeroを立ち上げられるのは彼しかいなかった。だから彼はRamenHeroでうまくやっている。ソフトウェアの中でも、自分が一番ふさわしいファウンダーであるかどうかはすごく大事なのではないかと思いました。これが「自分にしか作れないもの」です。

――それはすごく良い話ですね。しかし、例えば周りがその人にふさわしい資質を分かっていても、当の本人が分かっていない場合もありそうです。どのように条件を見つけていけば良いのでしょう?

山田さん:周りの人が大事だと思います。自分で自分を知るのは難しいので、客観的に自分がどういう生活をしているのか、周りの人から見てみることですね。中心に自分がいると考えると、自分が一番濃い。自分の場合、リモートワークやフリーランスの人が周りに多かった。それがRemotehourにつながっています。

Remotehourはオンラインのコミュニケーションを変える


――Remotehourについて、山田さんでなければ生まれなかったアイデアはどの部分だと考えていますか?

山田さん:当時フリーランスで、フルリモートでアメリカに居ながら日本にいる複数のクライアントと仕事をしていました。
一番問題だったのは、コミュニケーションよりもプレゼンスです。日本とアメリカには13時間の時差があります。いつ起きているかなど、お互いのタイムゾーンが分からないんですよね。そうしたときに、自分が今何をしているか、話せる状態なのかというステータスを提示できるようなサービスとしてRemotehourを始めました。

――なるほど。同じ常時接続のビデオチャットだとWherebyがありますが、Remotehourとの違いはどんなところにあるのでしょうか。

山田さん:どちらもビデオチャットの機能がありますが、Remotehourはステータスの部分が大事なサービスで、ユーザーが話せる状態か、何の作業をしているかにフォーカスを当てているプロダクトです。そこに更にシームレスにコネクトしていくためにビデオチャットを使っているだけであって、決してビデオチャットのサービスではないということが大きな違いだと思っています。
個々の機能で違うところもたくさんあります。ビデオチャットの部分にも違いがあり、例えばWherebyは話すのにスケジュールを組む手順を踏まないといけない。Remotehourであれば、時間さえ合えばいつでも繋がることができます。

――つながっている相手に会いに行く、という違いは大きいですね。Remotehourに使用されている言語を教えてください。また、どれくらいの期間で実装されたのでしょうか?

山田さん:ほとんどJavascriptで、フレームワークはReact、Typescritで作っています。Firebaseも使っています。制作期間は2週間でした。最初のビデオ機能が無いものは3日で作成しました。 

Remotehourのこれから。世界で使われるプロダクトをつくっていきたい

――Remotehourはどういう人たちが使っているんですか?

山田さん:1対nのコミュニケーションが多い、大学教授や医師、採用担当の方の利用が多い印象です。
大切なのはステータスという話をしましたが、ステータス自体はどのサービスにもついていると思うんですよ。FacebookのメッセンジャーやSlackにも緑のマークがついていますよね。Remotehourの特長は、誰かがオンラインになったら通知が来る、オンラインであるステータスそのものを表せるところにあるんです。これはコミュニケーションのあり方を変えていくと考えています。オンラインだから話す。話す内容が先、というのはリアルの名残りなのかもしれない。これからフルリモートで働く人が増えると、オンラインの人に話しかけてから物事が決まっていく、アイデアが生まれるようになっていくのではないでしょうか。

――Remotehourの今後と目標について教えてください。

山田さん:とにかく世界で使われるプロダクトをつくっていきたいですね。さらにこれからはバンバン人を増やしていきたいと思います。個人でやっていた時期はもう終わって、いまはチームがあります。どんどんマイクロソフトやAirbnbと同じようなレベルにしていきたい。そのためにエンジニア、リソースを増やしていきたいと思います。

――ありがとうございます! 最後にE3のコミュニティで将来起業を目指すエンジニアの方にもメッセージをお願いします。

山田さん:起業はハードルが高いように思う方もいるかもしれません。シリコンバレーに憧れるものの、恐れ多い……と考えるような人も。でも割と自分のようにゼロからスタートした人もいます。そういう風に挑戦する人が増えていければ良いなと思います。起業はそんなに難しくないです、大変だとは思いますが……。人生は1回なので人生をかけられるテーマを見つけて、取り組めるというのは幸せなことだと思います。シリコンバレーにいる日本人の起業家は、海外で活躍するアスリートと同じように日本を背負う気持ちでやっている人が多いと思います。ぜひ一歩踏み出してみることをおすすめします。

――今日はありがとうございました!


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