「喜んでもらえることがやりがい」届かないと思ったからこそIT講師の道が拓けた

on 2023.04.28
「喜んでもらえることがやりがい」届かないと思ったからこそIT講師の道が拓けた

キャリアや転職に悩むエンジニアの方へ向けたインタビュー企画。今回はIT講師として活躍中の鹿又広行(かのまた・ひろゆき)さんにお話を伺いました。研究開発から製品開発を経て、IT講師の道を志した理由やIT講師に向いている人、今後の展望についてもお話いただいてます!

ライター:荒井啓仁

## 鹿又さんの経歴

|年|会社/学校|経験したこと|
|:----|:----|:----|
|2012年3月|東京農工大学 卒業|高専から大学、大学院まで9年に渡り情報工学を学ぶ。開発言語などは9年間で身につけた。|
|2012年4月|P社入社|車載カメラの画像認識技術の開発や性能向上に取り組む。特許出願なども13件ほど行う。2012年から2018年まで6年ほど在籍し、全社横断プロジェクトなどにも取り組む。|
|2020年4月|A社入社|友人の紹介でシステム開発会社に転職し、ECサイトの受託開発に参加。環境構築やメンバーのフォローなど10人ほどのチームで半年間働く。|
|2021年4月|フリーランスとして独立|A社在籍中に、IT講師に興味が湧き契約満了でA社退社後に独立。以降、企業向けのIT研修のメイン講師・サブ講師として活躍中。|

高専→大学→カーナビの研究開発

ーーエンジニアを志したタイミングはいつでしょうか?

高専から大学にかけて情報工学を学んでいました。新卒で入った会社でも、大学で研究していた内容と同じような仕事だったので、学生時代から働くまでがシームレスなイメージです。

ーー1社目ではどんな経験をされましたか。

カーナビのフロント側のカメラ周りで、研究開発をおこなっていました。車がレーンを正しく走っているかなど、映像から周辺環境の情報を抽出する技術の研究を6〜7年ほど従事しました。

ーー転職を考えたきっかけは何でしょうか?

当時は研究部門が多く、9部門ほどあり全体で500人ほど所属していました。研究テーマが多すぎて、自分のやったことが埋もれてしまうのが最初のきっかけかもしれません。

ーー500人は多いイメージです。

製品に乗せる技術を検討していても、多すぎて製品に乗り切らないんです(笑)。お世話になった勤続20年以上の先輩も、研究開発技術が1回しか製品に乗らなかったそうで……。技術研究は楽しいが報われないと感じ退職を決めました。

ーー1社目で身についたスキルなどはありますか?

研究業務の中で、問題の原因がどこにあるのか察知する力が身についたと思います。問題が発生した場合に、どこにフォーカスすればいいか、あたりを付ける感覚は1社目での経験があったからこそかもしれません。

友人に誘われ入社。研究と製品開発の違いを実感。

ーー2社目に入ったきっかけは何でしょうか?

転職先を見つけずに1社目をやめてしまったところ、高専時代の友人と飲みに行った際に誘ってもらいました。

ーー2社目でも研究開発を行っていたのでしょうか?

いえ、こちらでは製品開発に携わりました。研究開発はスケジュールに余裕があるのが常でしたが、スピード感のある現場に入れたのはいい経験になりました。

ーー転職、独立を考えた理由は?

2社目は自分の故郷、北海道に本社がある会社で、ずっとここにいようと考えていました。東京事務所で入った1回目の案件がかなり大変でして……。今思えば、最初に入るような案件ではなかったですね(笑)。研究や開発以外で、エンジニアとしての働く道は無いかと考えていたときに、講師の仕事が見つかり、転職を決意しました。

IT講師という仕事に惹かれ独立。動画で見た講師に直接メールし案件を獲得!


ーー講師の案件はどうやって探したのでしょうか?

とあるエンジニア講座の動画に出ていた方の雰囲気が良いなと感じました。お名前で検索すると、IT研修を運営する会社の社長と分かり、お名前とドメインから会社のアドレスに直接メールしました。

ーーすごい行動力ですね!

良さそうだなと思いメールしたところ、二つ返事で「いいよ」と(笑)。2社目を辞めたのが12月で、翌4月からの案件に参加できました。

ーーすごいスムーズですね……。

運が良かったんだと思いますが、今思えば、エンジニア職で「IT講師をやりたい」という人材の少なさも影響しているかもしれません。
私のイメージでは、エンジニアって人に教えるよりは、自分で手を動かしてものづくりしたい人が多いと思うので。。

ーーIT講師という仕事に興味が湧いたのはいつごろでしょうか?

元から人に何かを教えるのは好きだったんです。1社目でも新卒を抜けたころから技術以外にもメンター的に下の世代と関わることがありまして。そのときに人に教える面白さを実感しました。教えて、理解してもらえて、場合によっては喜んでもらえる部分にやりがいを感じ、それを仕事にできればと思いました。

ーー天職というか。

そうですね。ただ、大勢の人といきなり打ち解ける必要があるなど、IT講師特有のハードルもあり、現場に入りたての頃は向いてないのかもと悩むこともありました。難しさを感じながらも、受講生たちの成長した姿を見たときは、IT講師をやって良かったと強く感じましたね。

ーーIT講師の醍醐味は何でしょうか?

エネルギーがある若い人たちと接するのは面白いですね。。新しい価値観をもらえるのもこの仕事の醍醐味の1つだと思います。

ーー現在はフリーランスとしてIT講師をされていますが、独立の際不安はありましたか?

不安しかなかったです。個人事業主の仕組みが全く分からず、注文書や請求書の概念も独立してから知ったくらいでして。

ーーそれでも独立されたのには何か理由があったのでしょうか?

1回くらいは挑戦しておこうかな、という気持ちも強かったです。当時32歳で、今までやってこなかったことをやった方が今後につながるんじゃないかと思ったんです。
大きい会社だとぬるま湯すぎて、自分が駄目になる感覚があったのも大きいです。人が多いと何もしなくてもお金が入るし、サボり方が身についてしまったというか。昔の自分であれば逃げていたかもしれませんが、怖くても挑戦してみようと思いました。

IT講師に適性がある人とは? 今後はサービス開発にも着手したい


ーーどういった方がIT講師に向いていると思いますか?

これは自分の特徴というか、経験ですが……。エンジニアとして上を目指せない、凄腕のエンジニアには敵わないと思ってしまった人でしょうか。自分の場合は、背伸びしても届かない人がいることに気づいたときに、初めてIT講師の道を考えました。同じように、エンジニアとしてのモチベーションが周りと違う人、ものを作るよりも人に関わるのが好きな人は向いていると思います。

ーーなるほど。どういった性格の方が向いているでしょうか。

空気を読める人、周囲に目を配れる人が向いていると思います。受講生同士の関係性や相性、リーダーシップのある人物は誰か、ムードメーカーは誰か、など見抜ける人は適正があるのではないでしょうか。
あとは、諦めない人ですね。

ーー諦めない人というと?

受講生にはいろいろなレベルの人がいるので、人によって理解力に差があります。そういう場合に諦めて見捨ててしまうのではなく、見守れる人です。講師の中には、理解力が及ばない受講生に対して感情をあらわにしてしまう人も少なからずいるので……。

ーーIT講師だと、知識のキャッチアップも大変そうですね。

講師として教壇に立つには、何でも答えなきゃいけないプレッシャーはありますね。自分のキャリアの中で、IT講師をしている今が一番勉強していると思います。新しい知識をどんどん入れないと時代に追いつけないので、勉強が好きじゃないと成り立たない仕事ですね。

ーー今後の目標についてもお伺いさせてください。

できるだけ不労所得を得られたらと思います(笑)。サボりたいというわけではなく、儲けを生み出す時間を減らしてサービスを作る時間に当てられれば。アイデアはあるので、趣味的にいろいろ作ってみたいです。教材動画などを製作して、本業の負担を少しでも減らして着手する時間を増やしたいですね。

ーー長期的な目標は何かありますか?

生きている間は仕事を続けられればと思っています。あまり趣味が無いので老後も仕事を続けたほうが、肉体的にも精神的にも健康でいられるのかなと。
IT講師はこのまま続けると思うので、個人的な塾が開けたら面白いかもしれないですね。

・今の就業形態:個人事業主(フリーランス)
・現在の仕事:IT講師
・得意分野:教育
・使用言語・スキル:Java, SpringFramework, Python, Django, C++
・仕事で大事にすること:その場にいるすべての人間の幸福に少しでもつながるような行動をとること
・今後やってみたいこと:教材をつくること、趣味を増やすこと(絵や音楽制作などやってみたい)

企業登録すると、このエンジニアと会話できるようになります!