
E3に参加するエンジニアの皆さんへのインタビュー。今回はフルスタックエンジニアとして数々の依頼をこなしながら、臨床心理士としても働くY.Tさんにお話伺いました。エンジニアとしてのお話はもちろん、臨床心理士のお仕事や職業を両立するきっかけ、エピソードもお伺いしています。
ライター:荒井啓仁
「メガデモ」に惹かれてエンジニア職に。就職2年で早くも独立!
ーー 現在のお仕事について教えて下さい。
エンジニアとしては、フリーランスで複数の案件を受け持っています。最近はIoTやFA制御の開発のお仕事をいただくことが多いです。エンジニア職以外に臨床心理士としても働いています。
ーー臨床心理士との兼業はすごいですね。
エンジニアは今年で24年、臨床心理士は11年目です。エンジニアとしてのキャリアの半分くらいは兼業でやっています。
ーーすごいですね……。臨床心理士のお話は後でぜひ伺いたいですが、まずエンジニアとしてはフロンエンドとバックエンド、どちらが専門ですか?
分野は分けず、必要に応じてどちらもやっています。
ゲームやVR、Webからスマホアプリの開発、ブロックチェーンや金融関係の案件も依頼されます。
ーーエンジニアを志したきっかけは何でしょうか?
10代の頃「メガデモ(Megademo)」に興味を持ったのがきっかけですね。
ーーメガデモとは何でしょうか?
PC上にリアルタイムで映像や音楽の再生を行うプログラムです。
ーーなるほど、大学ではプログラミングを学ばれたのでしょうか?
大学に進んだはいいものの、10代の終わりに組み込みのバイトに入りプログラミングに夢中になってしまい、大学を中退しアスキーに入社しました。アスキーではECサイトの開発や、技術書の執筆を行い、2年ほど働いた後フリーになり現在に至ります。
ーー転職ではなく独立を選んだのは何故でしょうか?
モバイルアプリ開発の技術書を執筆したことで、アプリ関係の仕事の依頼が多く来まして。当時はドットコム・バブルの真っ只中で、横のつながりから自分宛てに来る仕事も多かったんです。モバイルの仕事に限定しても良かったのですが、いろいろな開発に携わりたかったので何でも引き受けました。
ーー順風満帆な出だしだったのですね。
おかげさまでエンジニアとして働いてきた24年間、個人的なつながりで仕事が続いてきたのは幸運だと思いますし、今までの仕事が認められた気がして嬉しいですね。
ーースキルアップを実感できた現場や案件を教えてください。
いろいろな現場や開発を経験してきたのは全て勉強になったと思います。最も手応えを感じたのは、1人で契約から納品まで責任を持って行う請負の案件です。要件定義から設計開発まで、ワンストップで全てやった経験は自分の強みになったと感じています。
ーーお仕事で使う言語は何でしょうか?
現場ごと、案件ごとに必要になったものを使うスタイルなので、全て挙げるのは難しいですが、最近ではSwift、Kotlin、TypeScript、C#あたりを使うことが多いです。必要になればPythonなどを使うこともあります。
人の心に関心を持ち臨床心理士に。現在は刑事被告人への心理支援活動を行う

ーー臨床心理士を志したきっかけは何だったんでしょうか?
炎上現場で精神的に不調になってしまったエンジニアの方を目にしたのがきっかけです。最初は人の心に関心を持ち始めて本を読む程度だったのですが、精神的な不調を抱える人のサポートができればと思いはじめ、勉強していくうちに臨床心理士という資格に興味を持ちました。資格取得のため、大学院を受験しようとするも、大学を中退していたのですぐには受験できず……。エンジニアとして仕事をしつつ、放送大学に3年間通い単位を取ってから大学院を受験しました。
ーー働きつつ受験して臨床心理士になるなんて、考えられないくらい忙しそうですね……。
一番忙しかったのは、大学院に入った年ですね。第一子が生まれたので、論文を書きながら子どもをあやして、仕事ではプログラミングをして……。とにかく多忙でしたが、エンジニアの仕事も臨床心理士の勉強も自分のやりたいことだったので、今では良い思い出です。
ーー臨床心理士としてはどういったお仕事をされているのでしょうか?
保健所で非常勤の心理相談員として、区民の方の相談を受けています。不定期ですが、刑事被告人の心理支援活動も行っています。
ーーどういった活動なのでしょうか?
罪を犯して刑事被告人となった方の心理面のサポートと、裁判に提出する専門家意見書の作成が主です。男性の臨床心理士は少ない上に、平日昼間に動ける臨床心理士はさらに少ないので、弁護士さんに声をかけていただくことが多いです。
ーーなるほど。心理支援活動について詳しく教えて下さい。
拘置所や警察署に勾留されている方との面会を通じて、犯罪の背景となった生活環境や性格特性などをアセスメントし、意見書を作成します。加害者となった方は、病気や貧困などの問題を抱えているケースがほとんどなので、心理面接を通じて内省や更生に繋げていくことを目指しています。
ーー心理支援活動を行おうと思ったきっかけは何でしょうか?
裁判員として裁判に参加したことがきっかけです。臨床心理士が裁判員に選任されるのは、自分で2例目とかなり珍しいそうで、法律雑誌から寄稿の依頼もありました。犯罪は許されないことですが、加害者は更生に必要な支援を受け難いのが現状です。裁判員の経験を通じて加害者臨床に関心を持ち、刑事被告人の心理支援活動に携わろうと思いました。
エンジニアと臨床心理士の両立。今後はエンジニアとの交流を増やしたい

ーーエンジニアと臨床心理士、全く違う業種に思えますが両立することについての考えをお聞かせください。
エンジニアと臨床心理士は全く違う仕事だと思われるかもしれませんが、突き詰めれば根幹は似ていると思います。どちらも知識と経験を活かして依頼者を支援する仕事だからです。専門家としての技量を求められますが、その評価が難しい点も共通していると感じます。
ーーなるほど。ご自身がエンジニアに向いているなと思う瞬間はありますか?
夢中でコードを書いていて、気づいたら朝になっていたときですね(笑)。時間を忘れてコーディングに没入できるので向いているのかもしれません。体系的に学べるものがあって、知識を広げられるのもエンジニア職の面白い部分ですね。
ーー臨床心理士はご自身に向いていると感じる部分はありますか?
臨床心理士の仕事に関しては、自分が向いているかという判断は難しいところです。エンジニアのように知識や経験を活かして人の役に立てればと思っていましたが、相手が人間なので予測通りに行くことはほとんどありませんし、自分は向いていないのかもしれない、と悩むこともあります。。かといって知識が役に立たないかといえばそうでもない。難しい仕事ですが、やりがいと手応えを感じています。
ーーありがとうございます。エンジニアとしての今後の展望についてもお伺いさせてください。
あまり長期的な展望は持っていないので、目の前にある課題に取り組み少しでも先が見えたら良いですね。コロナ禍でエンジニアさんとの交流が減ってきたので、E3経由で交流を増やして、いろいろなプロジェクトに貢献できればと思っています。
・今の就業形態: フリーランス(個人事業主)
・現在の仕事: ソフトウェアの設計・開発。臨床心理士。
・得意分野: ソフト開発全般。好きな分野はコンピューターグラフィックス。
・使用言語・スキル: 必要に応じて色々使います。
・仕事で大事にすること: 信頼関係
・今後やってみたいこと: インディーゲーム開発。ジェネラティブアート。エンジニアの心理支援。