結婚式向けサービスを開発する石川智章さん「同じつくるなら面白く」(E3メンバーインタビュー)

on 2020.10.05

E3コミュニティメンバーの皆さんはどんな思いでいま仕事をしているのか。今までの経歴や成功・失敗体験も含めてお話を伺っていきます。今回インタビューしたのは石川智章(いしかわともあき)さん。エアコンの室外機の設計から始まり、ゲームアプリエンジニア、サーバサイドエンジニアとしてキャリアを積み、いまは結婚式向けの写真投稿サービスを新会社で運営されています。お話していくと石川さんは「同じつくるなら面白く」をモットーに仕事をされていることが分かりました。

ライター:平田提

エアコン室外機の開発→ゲーム会社に転職「同じつくるなら面白く」

――いま石川さんはどんなお仕事をされているんでしょうか?

石川さん:元々はエンジニアとしてサーバサイド開発やPMといった業務を経験してきました。

現在はこれまでの経験を活かし、アパレル業界向けにIoTサービスを提供している会社で、クライアントがやりたい事、思いをヒアリングしてシステム化後のサービスイメージを提案、その後仕様に落とし込むといった、クライアントとエンジニアの橋渡し役をさせていただいています。

――仕事をする上で心がけていることはありますか?

石川さん:そうですね。受託の仕事でも「このほうが良いんじゃないか」とアイデアが湧いたら提案をするようにしています。

もちろん、不要と言われる場合もありますし、その場合は取り除けるようにして。

――技術力があるからこそできることですよね。

石川さん:どうなんでしょう、技術力よりも「おなじつくるんだったら面白いほうがいい」って考え方があるからかもしれません。僕がプログラミングに触れ始めたのってゲーム開発の仕事がきっかけなんです。そこでの仕事はまさに面白いものをつくろうというものでした。

――そうだったんですね。

石川さん:ちなみにゲーム会社の前はエアコンの室外機をつくってました。

――ぜんぜんジャンルが違う(笑)。

石川さん:そうです(笑)。もともとはハードをつくってたんですけど、ソフトがつくりたくなって、ゲーム制作会社に転職しました。当時はガラケー、iモードアプリ等のゲーム開発がメインでした。

――短いスパンでリリースしていたイメージがあります。

石川さん:まさにそのとおりで、1月半で1ゲームつくっていましたね。

――そのサイクルで働いていたら、スキルが鍛えられそうですね。

石川さん:はい。大変でしたが身につくものが多かったですね。自社のオリジナルコンテンツが中心でしたが、版権モノのアプリ開発もありました。詳しい仕様書が残っていない有名レトロゲームをみんなで何度もプレイしてフラグを見つけたり。

モバイルコンテンツの大手企業でサーバサイドの技術を学ぶ

――ゲーム会社でのお仕事、お話を聞いていると楽しそうですが、どうして転職を?

石川さん:iモードアプリは売上がよかったんですが、他部門で大失敗してしまって……会社が潰れてしまったんです。

――なんと! 大変ですね……それからどうされたんですか?

石川さん:とりあえず転職しようと、当時のモバイルコンテンツの大手企業の求人に応募してみたら採用されたんです。ゲーム会社ではau向けにBREWという開発プラットフォームを使っていたんですが、このBREWが分かるエンジニアが欲しかったようで。

――転職後はどんな仕事を?

石川さん:最初はアプリエンジニアだったんですが、途中でサーバサイドエンジニアの仕事をしていました。

――どうして転向されたんですか?

石川さん:初出社の日に最初の上司と話したことがきっかけです。いきなりその上司は「石川さん、これからどうなりたい?」って聞いてきたんです。

――面白いですね。

石川さん:上司はその後も続けて「石川さんは社長になりたい? それとも部長?」と質問してきました。社長は自分が好きなように舵をきれるけど、責任は大きい。部長はそこまで権限はないけど社長ほどの責任の重さはない。

――石川さんはどう答えたんですか?

石川さん:「自分は社長になりたい」と答えました。ゲーム会社の「みんなで面白いことやろうぜ」って文化は僕も大好きで、そういう会社で働きたいけど、メンバー・部長だと実現したくでもできない可能性がある。そう話すと上司が「社長になるためのロードマップつくろう」となって、サーバサイド側も学ぶとさらにスキルが身につくだろうと話しました。

上司がその話を覚えてくれてて、後でサーバサイドに異動させてくれました。

――石川さんの将来を考えてくれたんですね。

石川さん:そうですね。ただ異動先の業務量がえげつなくて……当時、社内で最も重要なコンテンツの一つだったチームへ、初心者の自分が配属になりまして……。

――なんと……!

石川さん:テレビ番組とも連動していた為、特番ともなるとものすごいアクセス負荷がサーバにかかるけど、当時はAWSなどもなかったので、特番に備えて数十台サーバを増設したり、監視したりとなかなか大変でした。

ただスキルの高い同僚が多かったので、開発のノウハウをたくさん学べました。

自分の結婚式でニーズに気づき、ブライダル向けサービスを開発

――そのあと石川さんは独立されるんですよね。きっかけはなんだったんですか?

石川さん:社長になるのが目標でしたが、まずは個人で仕事できないとだめだなと思って29歳のときに独立しました。30代で会社を辞めて失敗するのと比べると、20代のほうがまだ失敗しても軌道修正しやすいかなと。

受託でエンジニアの仕事を始めたのですが、そこで現E3代表の大津さんと知り合いました。もう10年以上の付き合いですね。

――そうだったんですね。

石川さん:ただフリーでの受託開発はいったん終わる予定です。今年7月に会社を設立したので。

――その会社ではどんな事業をされるんでしょうか?

石川さん:結婚式の最中に列席者の方が撮った写真を、プロジェクター等にリアルタイムで流していくサービスです。 

――需要がありそうですね!

石川さん:僕は去年結婚したんですけど、もともとは自分の結婚式用につくったシステムなんです。すでに同様のサービスがいくつかあって、結婚式場に紹介もされたんですが、なにぶん料金が高くて……。

――うーん、結構なお値段ですね。

石川さん:すでにカメラマンもお願いする予定だったので、写真関係だけで結構費用がかかってしまう。

どこか削れないか色々模索しましたが、一生に一度の晴れ舞台なので、やりたい事が多すぎて。

何度も妻と話をしている中で、ふと気づいたんです。私はサーバサイドエンジニアで、妻がフロントエンドエンジニア。「そうか、自分たちで作ればいいじゃん!」と。

――散々言われつくされているでしょうが……「初めての共同作業」ですね。

石川さん:まさにそうです(笑)。それで結婚式で使ってみたら、列席してくれた友人や結婚式場の方たちにも評判が良かったんです。

じゃあ本格的につくってみようかな、とブライダル関係者の知人に相談したら、ブライダル関係向けのイベントを主催している方を紹介していただけ、その方に「今度のイベントでプレゼンしていいよ」と言われて。プレゼンさせてもらえる!となったので、「これは転機だな!」と、思い切って法人化しました。

法人化を決心したのが6月15日で、7月1日に登記を済ませました。

――すごいスピード感! 仕組み的にはブライダル以外でも使えそうですが、業界に特化した理由は?

石川さん:開発したシステムは結婚式以外のイベントにも発展できると思っていますが、私自身が結婚式の為に作ったので、先ずはブライダルに特化しました。

使い方や機能も、実体験をもとに説明やプレゼンもしやすかったので。

PHP(オンプレミス)/Go(AWS)で画像配信処理を設計。今後も面白い開発を,

――このブライダル向けサービスの開発で工夫された点は何かありますか?

石川さん:今回はオンプレミス環境とAWSを併用しています。

元々自分の結婚式の時はオンプレミス環境で全てPHPで作って動かしていました。

スマホで撮影した写真は1枚数MBあることも多いんですが、そのままの容量でダウンロードしてプロジェクターに表示すると動作が重くなってしまいます。

なので画像サイズを1枚200KBぐらいPHPで圧縮していますが、サービス化するとなると、ある程度の負荷も考慮しなければならない。そうなるとこの「画像サイズ圧縮」処理の負荷が気になりました。今のオンプレミス環境で安定性は大丈夫か?と。

そこで色々考えた結果、開発~ローンチまでをなるべく早くする為、PHPの資産を使いつつ、負荷がかかる部分だけAWSに移設をして、安定性を上げる事にしました。

具体的には、

このように処理を分け、負荷がかかるところはAWSで調整できるようになったので、大分安定性が上がりましたし、イベント駆動設計にできたのでトライアンドエラーでチューニングするにも影響範囲を抑えつつ調整ができました。

――ありがとうございます。今回の開発で学ばれたことなどはありますか?

石川さん:自分でサービス企画から仕様策定、開発と一通り行ったので「ここで失敗するんだ」「ここはこういう風に直せばいいのか」とトライアンドエラーの連続で本当に勉強になりますね。

欲を言えば、もう一歩踏み込んだことはやってみたかったです。

たとえば、開発速度優先で一部オンプレミス環境に残っていますが、全面的にAWSへ移行、フロントエンドはSPAにしてサーバとフロントを分離、より機能拡張や改善をしやすいシステムしたいと考えています。

――今後はどんな開発をしていきたいですか?

石川さん:今回のブライダル向けのサービスですが、先ずはこちらを発展させたいと思っています。

その他に、元々ソリューションビジネスが好きで、IoTにも興味があるので、IoTサービス。またいくつか既に相談をいただいている業界もあるので、今後も「同じつくるなら面白く」のモットーで開発を進めたいと思います。

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