BASE、ツイキャスを経験「iPod touchのWeb制作が分岐点」H・Eさん(E3メンバーインタビュー)

on 2021.05.17
BASE、ツイキャスを経験「iPod touchのWeb制作が分岐点」H・Eさん(E3メンバーインタビュー)

E3コミュニティメンバーの皆さんはどんな思いでいま仕事をしているのか。今までの経歴や成功・失敗体験も含めてお話を伺っていきます。今回インタビューしたのは、iOSエンジニアとして健康管理アプリ開発に関わるH・Eさん。BASEやツイキャスなどへの転職や、美術への思いとプログラミング経験がApple製品で繋がったお話などを伺いました。

ライター:平田提

iOSの健康アプリを開発。メーカーごとに違うBluetoothの仕様を紐解く


――いまどんな仕事をされているんですか?

H・Eさん:上場企業で、iOSエンジニアとして働いています。開発しているのは、血糖値を測定器するデバイスからBluetoothでデータを受け取るiPhoneアプリ。糖尿病の患者さんが測定すると、アプリからサーバにデータが送信されて、お医者さんと共有でき、診断に役立てられるものです。今まではスタートアップ界隈のお仕事が多かったので、日々上場企業のやり方と向き合う日々です。

――今のお仕事に関わられるきっかけは何だったんですか?

H・Eさん:新型コロナウイルスが流行する今のご時勢もあって、この先健康に関わるテクノロジーがどう変わるのかに興味がありましたし、社会的な問題にも貢献できるのではと考えました。 

今までもBluetoothでデバイスと接続するアプリを作ったことはあったんですけど、それは工場出荷用のかんたんなものでした。いま開発しているアプリのBluetooth接続の設計はけっこう作り込みが必要でした。Web上にもBluetooth接続のサンプルは上がってるんですけど、接続した後にどういう暗号化をかけてデータを取得するとか、どういうステータスになったらデータを送らなくなるとかはメーカーごとに違う。それはNDA(秘密保持契約)がかかっている情報なので、ネット上には上がってこないんですね。

――おお……やってみなきゃ分からないことも多そうですね。

H・Eさん:そうですね。メーカーさんからサンプルのコードや仕様書が一応送られてくるんですが、実際の仕様はそこから漏れていることもあって。コードを書く以外の調整など、ビジネス経験が試されることがよくあります。

――メーカーから生の情報を手に入れなきゃいけない。

H・Eさん:今は何でも検索すれば出てくる時代と思われていますから珍しいですよね。iPhoneで健康情報を処理する方法は大きくは2つあります。BluetoothデバイスとiPhoneアプリとつないでデータを取得する方法と、iOSのヘルスケアアプリに書き込み・読み込みをする方法です。今回は前者で、ゼロから作っているので大変なところはあります。 

BASE、ツイキャスのグロースに貢献。フランクな会話から転職,

――今のお仕事に就かれて変化したことはありますか?

H・Eさん:仕事の仕方が変わりました。スタートアップでは、その日のうちに仕様が変わってどんどん作り変えていくようなスクラム開発がほとんどでした。いまの現場はウォーターフォール型に近い形で、病院など外部の方との関わりも多いです。なので「この仕様のほうが良いのにな」と思っても説得するのに時間がかかります。上場企業でサービスをやるっていうのはこういうことか、と感じます。

――やりがいはありますか?

H・Eさん:ソースコードの品質を高めたり、工程改革をしていったりするのはやりがいがあります。スタートアップではゼロからの開発や、リファクタリングは普通です。新しいWebサービスを取り入れるのも当然の気風がありますが、大企業では意外とそこが動きづらかったりする。そういった新しい文化を取り入れて変えていくのは面白いです。

――Eさんはいまのお仕事の前はどんなことをされていたんですか?

H・Eさん:フリーになる前はBASEやTwitCasting(ツイキャス)に社員として在籍していました。BASEはわりと初期の、Webからアプリの第一弾を出す、というタイミングでジョインしました。サービスがグロースしていく過程に関われたのは得がたい経験でした。

――有名なWebサービスに関われてこられたんですね。BASEにはどんなきっかけで?

イキャスを退職した頃、藤川さんはBASEのCTOをされていて「遊びにこない?」って言われて。そこからですね。

――割とフランクな会話で転職されているんですね!

H・Eさん:そうですね(笑)。ツイキャスの前はヤフーにいたんですが、懇親会で話した人がたまたまツイキャスのPRもされていて、今の会社を辞めるという話をしたら「ご飯食べに来ませんか」と言われたのが始まりです。企業理念やカルチャーに共感できるかどうかが転職の判断の軸かもしれません。あとは今まで手がけたプロジェクト自体が名刺になって、お話がしやすいのもあります。

工場のライン制御→ラーメン店のエンジニア→iPod touchが転機に,

――Eさんはどういう経緯でiOSエンジニアになられたんですか?

H・Eさん:一番最初は工場のライン制御の開発から始まって、オリンパスで内視鏡画像ファイリングなどの開発を行ってました。その後ラーメンチェーン店がブームになって急成長したとき、ラーメン店にいた友達から「バックオフィスの仕事が追いつかなくて大変だからシステム作ってくれないか」と頼まれてお手伝いを始めるようになりました。Wi-Fiの設定やアルバイトの出退勤管理システムをつくってサーバを自分の家において運用したり。そのうちお店から麺を発注できるシステムなどを作っていたら、先輩の会社に誘われて転職しました。 

iOSエンジニアになった直接のきっかけは、2008年頃のことです。当時はiPod touch用のWebサイトを作る人がその頃あまりいなくて、Apple本社の登録フォームから私がつくったサイトのURLを送ったら、すぐ本社のサイトに掲載してくれたんですよ。それを見たApple Japanの方がネイティブ開発にお誘いしてくださり、それがきっかけでiOSエンジニアになりました。

――多彩な経験をされてますね。小さい頃からエンジニアになりたいと思われていたんですか?

H・Eさん:エンジニアになりたいとは思ってなかったですね。最初は美術の学校に行きたかったんです。親に「大学に行きなさい」と言われて、大学に落ちても美術の専門学校には行かせてもらえるんじゃないかと思ってたんですよ。でも実際に落ちたら「専門学校行くお金はあげるから家を出て行きなさい。もしくはコンピュータ専門学校に行くかどっちかにしなさい」と言われました。それでコンピュータ専門学校に行くことにしたんです。

――親御さんからその選択肢が示されていなかったら、今の遠藤さんはないわけですね。美術と並んでコンピュータを引き合いに出されたのは何かきっかけがあったんでしょうか。

H・Eさん:子供の頃マイコンブームがあって、NECのPC-98シリーズとか流行った時期に買って与えてもらったことがありました。実際には僕はあまり使わなかったんですけど、親はこれからパソコンの時代が来るんじゃないかと思っていたんでしょうね。 

プログラムをつくる面白みを知ったのは、専門学校卒業後、就職して5年目ぐらいでした。Macintoshを買ったことで初めて「コンピュータって面白いな、何か作ってみたいな」と思うようになったんです。

Macで変わった世界観。アートとプログラミングがつながった

――Macの良さってどんなところにあったんでしょう。

H・Eさん:Macintoshを買ったことで、Macユーザーの先輩と仲良くなれたんです。それから「このソフト面白いよ」とか、Apple周辺の海外ベンチャー界隈のことを教えてもらったり。「向こうのベンチャーではスーツを着てなくて、ジーパンで働いてる。サラリーマンがやるような仕事じゃなくて、アートみたいなんだ」と。それから「プログラムとは何か」を考えて仕事するようになりました。

――Eさんのアートへの興味とAppleの哲学が共鳴した部分もありそうですね。

H・Eさん:そうですね。その先輩はその時代のAppleのデザインの仕組みや、ドイツのプロダクトのかっこよさもいろいろ教えてくれました。他にも仕事では聞けないエンジニアリングの話が楽しかったですね。

それからApple製品で動くプログラムを作りたい思いはずっとあったんですが、仕事としてはWindowsマシンのプログラムがほとんどでした。iPod touchのWebサイトやネイティブアプリをつくれるようになってから、仕事と興味がつながった面白みを感じるようになりました。自分で作ったコードがデバイスで動く感動。外に出てiPod touchを使ってるだけで楽しいんですよ。

――iPod touchやiPhoneのなかった時代からしたら、ド●えもんのひみつ道具みたいですもんね。Eさんはこれからのキャリア、人生でどんなことをやってみたいですか?

H・Eさん:今までは誰かのプロダクトの手助けをするお仕事でした。これからは自分で考えたアプリをたくさんの人に使ってもらいたいなと考えています。エンジニアが仕事で使う筋肉と、ディレクターやデザイナーとして世の中に広めていく筋肉って全然別ものだとは思うんです。でも今までもBASEやツイキャスなど沢山の人に使ってもらうサービスに関わってきたので、今までのエンジニア人生の集大成となるような代表作が作られたら嬉しいですね。

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