エンジニアの発信が世の中を面白くする(E3メンバーインタビュー)

on 2020.09.28

E3コミュニティメンバーの皆さんはどんな思いでいま仕事をしているのか。今までの経歴や成功・失敗体験も含めてお話を伺っていきます。今回インタビューしたのはH.Rさん。34歳でもともと独立すると決めていた理由、エンジニアの発信をもっと期待するようになったきっかけなどをお話いただきました。

(プロフィール)H.R:大手通信事業会社にてEC・人材・飲食・プロダクト制作などの複数の新規立ち上げに関わり、独立後はオープンイノベーションやスタートアップの開発支援を中心に活動する株式会社QUONを設立。UI/UXから、フロントエンド、インフラ/サーバーサイド、アプリ構築、プロダクト開発など自身で手がけながらも、事業会社のチームビルディングや経営戦略にも複数参画している。

ライター:平田提

前職では新規事業開発に邁進。34歳で独立しようと決めていた

――今日はよろしくお願いします。林さんはリモートワーク中心ですか?

Hさん:そうですね。基本的に自宅で働いていますが、ミーティングの際はカフェでやることが多いです。0歳の子供がいるので、泣き出すと収拾がつかなくて……。外で打ち合わせたほうが会議相手にも家族にも気を使わないですね。

――気を使わず仕事できたほうがいいですものね。林さんの今までの経歴を教えていただけますか?

Hさん:前職は通信事業会社で新規事業を立ち上げる仕事をしていました。現在は独立しています。開発やUXはもちろん好きで知識はありましたが、バリバリのエンジニアというより社内で開発できる部門をつくってディレクションする役割が大きかったです。

――なぜ独立されたんですか?

Hさん:その通信会社では店舗を立ち上げて、お店で携帯電話の販売をするのがメインの事業でした。新規事業も店舗がベースです。僕が興味を持っていた、オンラインで完結するWebサービスをつくる仕事はやりづらいところがありました。それで独立してWebの新規事業開発の仕事に専念しようと考えました。

――なるほど。独立されたのはいつですか?

Hさん:3年前ですね。以前から34歳で独立しようと決めていたので、そのタイミングでした。

――34歳っていうのは何か理由が?

Hさん:20代のとき働いていた会社の社長か独立したのが、34歳だったんです。そこの仕事がうまく回っていなかったので「僕が34歳で社長になったらもっとうまくやれるんじゃないか」って思いがずっとあったんです。

――面白いですね。そこでのお仕事はどんなものだったんですか?

林さん:ECサイトの運営代行です。もYahoo!ショッピングや楽天ショッピングが流行っていて、もともとはそのお店の立ち上げを営業して受注していました。そのうち同僚たちと「ECを立ち上げるより、売れないお店を売れるようにしたほうが世のためになるよね」と独立したんです。

そのときは24歳ぐらいで、とりあえず自分ができることをがむしゃらにやっていたんです。でも半年で資金がショートしてしまって……。そのあと、また別の会社を何人かでさらにつくったんですが、そのときの社長が34歳だったんです。

――「34歳」来ました。

Hさん:その会社もとにかくうまくいかなくて(笑)。メンバーは5人ぐらいしかいないのに対立したり、働かない人もいたり、僕が不眠不休で売上を作ってもみんなは飲みにいってしまっていたり。

――それはつらいですね。

Hさん:そのときは格安でホームページをつくりまくってたんです。でも「なんでこんなにうまく回らないんだろう。僕が34歳で独立したらもっとうまくやろう」と反骨心が湧いてきたんです。

転職をした前の会社では、新規事業の部署が回り始めていたんで「そろそろ抜けてもいいタイミング」だな、と独立しました。ちょうど34歳でした。

(Hさんの会社 株式会社QUON  https://quon.io/

――独立されていかがですか。

Hさん:やっぱり同世代や下の世代と仕事をしているとスムーズに回ることが多いなと感じます。僕らの世代って「プレッシャー世代」と呼ばれて、上から押さえつけられて危機感を煽られてきたところがあると思うんですが、みんな自ら学んで35歳ぐらいから伸びてきている気がします。

――一度死にかけると強くなる(漫画『ドラゴンボール』の)スーパーサイヤ人みたいな……。

Hさん:そうかもしれないですね(笑)。いまの30代の仕事のスタイルはいい感じだと思います。

独立後は企業の新規事業立ち上げをサポート。トレンドに乗ったサービスに人は集まる

――最近はどんなお仕事をされているんでしょうか。

Hさん:つい先日までは、不動産テックの新規事業立ち上げのお手伝いをしていました。サービス企画からメンバー集めまで「スタートアップセット」のような仕事です。そのプロジェクトはサービスを立ち上げる壁打ちから入っています。もともとその会社はSIerだったんですが、なかなか社内で新規事業をつくられなかったそうです。そこで僕らのほうで「こういうサービスをつくったら世の中の役に立つし、IRを出すと食いつく人がいるはずです」「まずエンジニアを集めてチームをつくりましょう」と提案しました。

――エンジニアの方はどうやって集められたんですか?

Hさん:知り合いのフリーランスエンジニアに声をかけました。いろんな言語が得意な人、要件定義やPMが得意な人、など特長のあるメンバーを集めました。いわば、その会社の中に飛び出た「こぶ」ができる感じでチームをつくったんです。

――「こぶ」は面白いですね。

Hさん:その「こぶ」の中に他の部署からのメンバーを入れて、逆に外に出てもらったりして、その会社にスタートアップっぽい雰囲気をつくっていきました。そうして会社の顔つきを変えてあげたら、さらにエンジニアの応募も増えたんですよ。1週間で7、80人ぐらい。

――1週間とすると多い人数ですよね。

Hさん:スタートアップの風土をつくって、トレンドのテーマに乗ったサービスをやると、人は集まるんだなと感じました。

エンジニアの発信がもっと増えると、世の中は面白くなる

――いまエンジニアの方たちと働かれていて、課題意識はありますか?

Hさん:みなさんまじめで優秀な方が多いです。ただビジネスアイデアを持ってるのに、発信されていない方がいる。それはもったいないなと思っています。

――どんな点がもったいないと考えられますか?

Hさん:エンジニアから出るアイデアは、そのビジネスアイデアが実現できる前提であることが多いんです。日本のWebサービスの中には、経営者が技術的なことは分からずに漠然と「こういうものをつくりたい」と始まっているものも多い。それで細かい部分が詰められなかったり、朝令暮改の仕様変更でエンジニアが疲弊してしまったりする。

一方で技術側から出たアイデアは、それに掛け合わせるビジネスチャンスを探してくればいいので、道筋ができやすくて面白い。だからエンジニアの発言はお金になる。エンジニアはもっと気軽に発信したほうがいいのに、と思います。

――エンジニアがスタートで、経営サイドがそれをどう市場に乗せるか考えるような。どうしたらエンジニアの人が発言しやすくなると思いますか?

Hさん:組織でやるのか、個人やプロジェクト単位でやるのかによっても違うとは思いますが、組織でやるなら経営サイドがエンジニアに何も言わないのが一番じゃないでしょうか。成果物やマイルストーンだけ約束して、のびのびとつくってもらう。

――Appleにおける、ジョナサン・アイブのデザインチームみたいな感じですね。

Hさん:そうですね。あとは「マネタイズするかどうか」で悩むのがハードルになっているなら、まずはつくって発信してみればいいのになとも考えます。人が集まるところにお金が集まるので。面白い活動をしているエンジニアにスポンサーが集まる、そうなると面白いですよね。

前職でバイクチームのスポンサーの業務もやっていたんですが、バイク選手はいっぱいスポンサーロゴのワッペンがはられたツナギを着て走るんですよ。エンジニアもそんなイメージで。

――eスポーツ選手もそんなスタイルですもんね。

Hさん:最初はお金にはならなくても誰かを楽しませている、その人を応援する意味でスポンサーがつく。そういう構図がもっとできればいいですよね。

――面白いコンテンツが先にある。

Hさん:そうなんです。最近のスタートアップもみんな同じ流れが多いじゃないですか。まず人を集めて、IRを打って……と。エンジニアが自由に面白いと思うものがまず存在すべきじゃないかと思うんです。

――なんだか「侍魂」とか「僕が見た秩序」の時代のネットを思い出しますね。

「週に2人は新しい人と会う」習慣が、仕事やアイデアをつなぐ


――仕事をする上でHさんが心がけていることはありますか?

Hさん:「週に2人は新しい人と会う」という目標を、独立してから決めたんです。ビジネスマッチングアプリのアカウントを外注して渡して、運用してもらってるんですよ。僕に合いそうな人を探してきてもらって、お話しています。E3代表の大津さんともその過程で知り合い、E3コミュニティに参加することにもなりました。

――それは面白い取り組みですね!

Hさん:さきほどの「エンジニアはもっと発信したほうがいい」という課題意識も、エンジニアと何度か会って感じたことです。

会話の流れで仕事をもらったりもあったし、一緒に会社を立ち上げたこともありました。E3コミュニティもその流れで参加させてもらっています。

――お仕事の機会にもつながってるんですね。

Hさん:あと、異業種の人と話すと刺激が多いんです。先日はファッション業界の人と今後のアパレルの仕事はどうなるのか話していたんですが、驚くほどいろんなアイデアが出てきました。

――多様な人と対話すると閃きやすいですよね。

Hさん:対話で自分の思考が整理できるのはいいですね。「自分はこんなことを考えていたんだ」と話していて分かることが多いです。テニスのラリーみたいに、練習相手がいて初めてうまく打ち返せる、出せるようなところがアイデアにもある気がします。

――新しい人と定期的に会う習慣、僕もやってみようかなと思いました。最後に今後お仕事でやってみたいことを教えてください。

Hさん:いま取り組んでいる仕事の1つが、飲食店のサポートサービス。新型コロナウイルスの影響で飲食店の業績が冷え込んでいますよね。どうしても、これからも飲食店に行くことを控える人が増えて、これまでの来店数が期待できないお店も多い。またインバウンド需要が大きかった飲食店もあります。料理はとても美味しいのにこのまま続けられないと悩むお店に、プラットフォームを提供して飲食店を別の業態に変えるサービスづくりを進めています。

あとはさっき言っていたような人のマッチングサービスも考えています。人と話してアイデアを出したり、ダイレクトに仕事をつなげたりするようなものです。

今日お話していても、僕は心底ゼロ→イチの新規事業づくりが好きなんだなと思いました。

――どちらも世の中のためになるし、楽しみなサービスですね。期待しています。今日はお話ありがとうございました!

企業登録すると、このエンジニアと会話できるようになります!