E3コミュニティメンバーの皆さんはどんな思いでいま仕事をしているのか。今までの経歴や成功・失敗体験も含めてお話を伺っていきます。今回インタビューしたのは「合同会社ふくふく」のM・Rさん。データアーキテクトとして活躍されているMさんがエンジニアの道に入ったきっかけは、ネットの普及と税理士の勉強だったそう。勉強での成功体験が今のお仕事につながったこと、さらに幼児教育アプリへの関心など、お話を聞かせていただきました。
ライター:平田提
SQLが好きで、今もコードを書く。データアーキテクチャとして企業をサポート
――Mさんが合同会社ふくふくをつくられたのはいつなんですか?
Mさん:去年(2019年)の7月です。データアーキテクトの仕事を中心に、スマホアプリの企画・開発も手掛けていきたいと考えています。
――会社をつくられる前はどんなお仕事を?
Mさん:フリーで18期ぐらい、バックエンドのエンジニアをしていました。会社をつくる1年ぐらい前は、ずっとデータエンジニアの仕事でした。
――データエンジニアのお仕事はどんな案件が多いんですか?
Mさん:いろんなシステムからデータをかき集めて、下処理して、用途に応じて集計したり、可視化したりします。パイプラインの構築もしますし、ご担当者向けにローデータやCSVファイルを用意したりもしています。
――マーケティングに使うデータが多いんでしょうか。
Mさん:そうですね。以前は6年半ぐらい、某企業の現場で大量のデータ処理をしていました。ものすごい膨大な量のデータを常に処理するので、バッジを回すのに1週間かかるものもありました。
――そんなにかかるものなんですね!
Mさん:扱うデータが1日100万件増えるとかになってくると、それぐらいかかってしまいます。並列処理を施したり、クラウドのアーキテクチャーを増やしたりして、とにかくパフォーマンスとの戦いですね。
――データサイエンス、アーキテクチャのお仕事は長いんですか?
Mさん:21歳からこの業界にいるんですが、最初は業務エンジニアでした。VBAやオラクルを使った仕事です。2、3年してベンチャー企業の立ち上げに関わって、Web開発をするようになり、2000年初頭にはソーシャルゲームを作ったり、KPIログの収集をしたりするようになりました。それからなるべく鮮度のいいバッチを回したり、データ収集を効率的にしたりする仕事が中心になった感じですね。
BtoBの企業は、クロール結果の価値が大きいんですよ。例えば気象庁のアメダスの情報を毎日クロールするとか、そういうものが営業商材になったりするんです。
――企業の担当者がやろうと思うと膨大な時間や手間がかかるものをMさんが代行されているんですね。
Mさん:そうですね。数十万件のデータをとるとなると、ある程度並列化したりしないといけません。生かさず殺さず、そのバランスをとってやっています。
――職人感がありますね。お話しているとエンジニアのお仕事が本当にお好きなんだなと思いました。
Mさん:どうなんでしょう(笑)。いまはAWSを使う案件がほとんどですが、求められる仕事はどんどん複雑になっています。AWSならLambdaを大量に実行したり、ECSの多重度を上げたりしています。
今はフレームワークが増えてきているので、Webアプリをつくるハードルは下がってきていてとても良いと思います。一方で、データ分析は泥臭くSQLを何千行も書かなきゃいけないところがあります。
僕はもともとはSQLが好きだったんですね。20年以上SQLを書いています。だんだん便利になってきた歴史を見てるので、それだけでも面白い。そういうふうに楽しめる素養があるのかもしれません。
税理士を目指した学生時代。簿記の勉強の成功体験から、エンジニアの道へ
――学生時代からエンジニアになろうと決めていたんですか。
Mさん:いえ、学生時代は税理士を目指していました。
――え、全然違う業界ですね。
Mさん:コンピュータは好きで、趣味の範囲で勉強はしていました。シェアウェアを販売したいなと思っていてソフトをつくってみたり。大学を卒業する前に税理士かエンジニアになるか少し迷ったんですけど、結局エンジニアの道を選びました。
――決め手はなんだったんですか?
Mさん:ちょうど大学を卒業した1998年ぐらいから、インターネットの普及が本格的に始まったんです。1995年にWindows95が出て、ネット元年といわれていましたがこの頃が一番盛り上がっていて、こっちに行くしかないだろうと思ったんでしょうね。
1994年ぐらいに、NECの有料パソコン通信「PC-VAN」に参加していました。当時はダイヤルアップの時代でしたが、HTMLとかも書き始めたのはその頃です。
――なるほど。エンジニアにはもともと近かったのかなと思ったんですが、なぜ税理士を目指そうと思っていたんですか?
Mさん:僕、基本教科の勉強があまり自信なかったんです。でも高校で簿記を始めたら、これがとにかく面白い。簿記一級までとりました。簿記が自信を初めて持てた、成功体験だったんです。
――そこで簿記の面白さに目覚めたと。
Mさん:パズルみたいなものなんですよね。貸借の数字がきっちり合うと気持ちいい。簿記は四則演算しかありませんし、ルールさえ覚えていけばきっちりできるのが良かったんです。
――きっちり数字を合わせたり、演算を重ねていったりするのはプログラミングにも共通しますね。
Mさん:そうですね。結果的に簿記やプログラミングのそういった部分が好きだったのかもしれません。基本教科については、勉強の仕方が分からなかったんでしょうね。でも簿記は楽しいし、モチベーションが保てました。その流れで、プログラミングの勉強を始めたらうまくいったんです。簿記の成功体験で自己肯定感が生まれたから、勉強が続けられたんだと思います。
――会社をやられていると、簿記の経験が活かされるんじゃないですか?
Mさん:いやぁ……税理士にならないでよかったとつくづく思います(笑)。自分一人でもこんなに大変なのに、他の人のお手伝いをするなんて。いまは税理士さんにお願いしていて良かったですよ。税理士になっていたら……危ないところでした。
――(笑)。
1つの成功体験が軸になるように。可能性を広げる幼児教育アプリをつくりたい
――E3コミュニティにはどういった経緯で参加されたんでしょうか?
Mさん:10年前のリーマンショック当時に、私の仕事が無くなってしまったときに、縁ありまして大津さんと知り合いました。10年間に少しお手伝いさせて頂いた仕事が1案件あっただけで、本格的にお付き合いさせて頂くようになったのは昨年の11月ごろです。
――今後やってみたいことってありますか?
Mさん:最初にいっていた、アプリ開発ですね。子供がいることもあって、幼児教育にとても興味があるんです。幼児向けアプリって足りないものがいっぱいあると思うんです。いかにもお勉強っぽいものが多くて、優れた知育玩具のようなものが少ない。これからプログラミングが特別じゃない時代になるし、STEAM教育が重要視されていくでしょうから、楽しく学べるアプリは絶対必要だと思っているんです。
――確かに例えばNaef(ネフ)の積み木みたいな、遊びを拡張するデザインがされた幼児アプリはあまり見ないような気がします。
Mさん:そうなんです。子供を子供扱いしているものが多いようで、そこが不満なんです。子供ってもっとすごいんですよ。僕は自分の子供でなんでも実験しているんですが、当時5歳の娘に、去年の元日、フランスやドイツの国旗を見せたらとても興味を示して。そこで「国旗検定」を受けさせたら、1年で一番上の1級に合格したんです。
――それはすごい!
Mさん:娘は全部の国旗を覚えたんです。娘は国旗を覚えたことで、ニュースを見るのが楽しくなってるんですよ。テレビでアゼルバイジャンとアルメニアの紛争のことをやっていたら、すぐに国名と国旗が出てくるみたいです。すぐに勉強にはつながらなくても、先ほどの積み木なんかもまさにそうで、幼児期のこういう経験は基礎体力みたいなものだと思うんです。
――Mさんの簿記の成功体験とも共通しますね。
Mさん:本当ですね。何か一つ軸足ができると、他の勉強にも転用しやすいんでしょうね。
――Mさんが思い描く、幼児アプリのイメージはどんなものなんでしょうか?
Mさん:できるだけゲームっぽく勉強を楽しめるものがいいなと思っています。小学生になってから読む図書を、小さい子でも読めるように何段階かに難易度を分けて用意するとか。「オックスフォード・リーディング・ツリー」という英語の読み物は、文字(ワード)数が本に分かりやすく書いてあるシリーズです。ワード数が少ないものは小さい子でも読みやすい。そういうカテゴライズは、語学全般で使えるアイデアだと思います。
アプリで出すことの意味は、サンプルが取れることだと思ってるんです。もちろん親御さんに対しては許可をとって、データを集めることでお子さんの読解力を測れるよとか、データの価値の納得感を示したりして。サンプルが集まれば、幼児教育の改善や研究が何かしら進められると思います。
――そこはまさにMさんのデータアーキテクチャとしての経験が活かされそうですね。ありがとうございました!