企業インタビュー
on 2022.03.23

コロナで打撃の音楽業界、DXで業界の構造を変える。株式会社RENI取締役中田悠樹さん

コロナで打撃の音楽業界、DXで業界の構造を変える。株式会社RENI取締役中田悠樹さん

新型コロナウイルスはどの業界にも影響を及ぼしていますが、音楽業界もその一つ。これまで通りのライブの開催が難しい状況が続いていますが、チケットだけでなくグッズ販売はアーティストや音楽関連企業にとって大きな収入源。ファンとしてもグッズを安全かつ確実に手に入れたいもの。株式会社RENIは音楽業界に特化したECやライブ物販のサポートなどを幅広く展開する企業。2021年紅白歌合戦に出場したAwesome City Clubのマネジメントも行われています。

今回は株式会社RENI取締役の中田悠樹さんに音楽業界でのDXの状況や、ご自身のキャリア、事業の今後の展望などお伺いしました。

ライター:荒井啓仁  インタビュー・編集:平田提(株式会社TOGL)

音楽業界にECプラットフォームを提供。業務全体のDXへ事業を拡大。


ーーRENIではどんな事業をされているのでしょうか?

音楽業界のDXがメインです。アーティストグッズのECプラットフォーム、OGS(Official Goods Store)では、これまで、ドームクラスのアーティストを含め200以上のアーティストのオフィシャルグッズストアを運営してきています。最近ではグッズ事業者に向けたMD Cloudというプロダクトも手がけています。

ーーOGS(Official Goods Store)はどのようなサービスでしょうか?

アーティストグッズECの垂直立ち上げプラットフォームです。自宅配送以外にも、あらかじめ決済を済ませておいて公演当日に並ぶことなく商品を受け取れるようなサービスも提供しています。

ーーなるほど。飲食店でいうモバイルオーダーのようなサービスですね。

そうですね。我々はコロナ以前からモバイルオーダーを提供していましたが、特にコロナ以降はライブの物販列に長時間並ぶのは感染症対策としても課題がありました。一方で当然運営側はグッズを売りたいし、ファンの方も買いたい。そのニーズに対応するサービスです。

ーーShopifyなどのECサイト構築サービスはありますが、違いはどこにあるのでしょうか?

OGSは業界特有のニーズに特化しています。ライブグッズ・アーティストグッズという特性上、販売開始時間にトランザクションが集中するという特性があります。一般的なECソリューションを利用すると、この際にサイトが落ちてしまうことがあるんです。販売できる商品タイプやサービスでも音楽業界に特化しています。Tシャツやタオルなどのフィジカルグッズだけでなくオンラインくじ、オンラインライブチケットのセット販売、購入条件に合わせた特典の付与などもECサイト上でカバーしています。

ーーなるほど。音楽業界やファンの慣習に馴染みやすいんですね。MD Cloudはどんなプロダクトなんでしょうか?

こちらはグッズの企画から製造、在庫管理、販売管理を一気通貫でデジタルスクラッチするプロダクトです。現状MD Cloudは、特定のクライアントさんのみで運用しながらブラッシュアップしています。

ーーMD Cloudはどういった経緯で立ち上がったのでしょうか?

グッズの委託販売を行う中で音楽業界のDXの必要性を強く認識したからです。非効率な業務体制は販売業務に限った話ではありませんでした。製造や在庫管理まで含めて、一気通貫でDXしなくては業界の課題解決はできないと思い、デジタル化の知見を提供し始めたのがスタートです。

ーーRENIさんにはAwsome City Clubが所属されているとのことですが、アーティストの方がいると、事業の肌感が分かりそうですよね。

実はAwesome City Clubのマネジメントは戦略的ではなかったんですよね。元ミュージシャンの代表の繋がりでたまたま弊社に在籍することになったんですが、結果的にとても人気が出て...…。とはいえ、ライセンサーが社内にいることで弊社のサービスの検証にも活用できるので、ポジティブなことだと思っています。

ーーなぜRENIは音楽業界の中でもグッズ販売領域に着手したのでしょうか?

音楽業界では「生業は音源だ」という意識が強いんですね。権利関係も音源に絡んだものがほとんどの中で、グッズドメインの立場は相対的に強くありません。

弊社の代表がライブ物販の現場を見た際のことですが、POSも無いし売上数も分からない。何億円もの現金を紙袋に詰め込んで数えている。この状況を目にして「チャンスしかないな」と思い、ECを立ち上げることになりました。音楽業界のビジネスは音源を源流に広がっていきますが、グッズ業界は既得権益も少なく入りやすかった。グッズは確かに消費者のパイは小さいですが、一定のファンの方が確実に購入してくれる、相対的にリスクの低いビジネスです。なので、実は下流とされるMDからのほうがDXはしやすいと考えています。

RENIはこの考えのもと着々と収益を上げ、20名程度の会社ながら約70億円の売上を上げています。

取引先への入社を経てRENIへ。キャリア迷子になりかけていたところを救われた?

ーーお話は変わって、今度は中田さんのキャリアについて伺いたいと思います。まず現在RENIではどういったお仕事をされているのでしょうか?

現在は取締役として、プロダクト全般の領域を担当しており、特にMD Cloudのプロダクトマネジメントや採用周りも担当しています。

ーーRENIに入ったきっかけは?

前職では経営と現場の課題感の乖離に悩まされ、プロダクトマネジャーとして価値を発揮できずメンタルを病みかけていまして……。RENIの代表や経営陣とは以前から知り合いで、声をかけてもらって入社しました。RENIに直接入社したわけではなく、今後受け持つ業務的に後々スムーズだなと思い、RENIの取引先のグッズ会社に入りました。全国のコンサート会場で販売を手伝いながら現場の感覚や業務も理解できて、取引先との関係値も築けたところでRENIに籍を移した形です。

ーー転職前からエンジニアとしてキャリアを重ねて来たのでしょうか?

新卒でNTTデータに入社した際はSEという肩書きでしたが、企画や営業職がメインでした。クライアント向けにモバイルアプリを作るチームのディレクターなどを2年半位やって、ベンチャーに転職しました。その後そのベンチャーが組織崩壊して空中分解したタイミングで一回RENIに誘われたのですが、お誘いを断って前述したメンタルを病みかけた会社に入ってしまい……。なので、RENIに入社したのは2回目の誘いの時でした。RENIの代表からすれば「使えそうなやつがなんか落ち込んでるから今誘っとこう」という感じで声をかけてくれたそうです。1回断っていた背景もあるので、足元見られてましたね(笑)。

ーーなるほど(笑)。入社した取引先はどういった会社でしょうか?

営業がものすごく強い会社さんです。OGSの取引でも大きなシェアを締めているクライアントで、MD Cloudのブラッシュアップもこちらの会社さんと行わせてもらっています。

グッズを作る会社では国内で一番の会社なので、こちらで活用してもらえれば同じ業態の会社にも受け入れてもらえると思います。僕自身が業務を理解できていてユーザの立場や気持ちに立って要求を出すことができるのは、実際にクライアントの社員になった経験があるからこそだと思っています。

体制が拡大すればエンジニア募集の可能性も


ーー現在RENIでのエンジニアの比率や重視している言語について教えてください。

エンジニアは正社員が6人、業務委託の方を合わせると10人くらいです。E3さん経由で参画いただいている方もおります。サーバーサイドのエンジニアが多いですね。今はPythonを使う人が多いですが、言語は必要に応じてみんなキャッチアップをしているので、特に縛りは設けていません。

ーー現在はエンジニアを募集されていますか?

直近は幅広くエンジニアを募集するフェーズではありません。ただ事業の展開によって、例えばチケットやファンクラブ領域にソリューションを提供していくことになれば、かけるエンジンのギアが変わってきます。そうなればエンジニア体制を拡大していく可能性はあります。

音楽業界をDXし健全なサプライチェーンの構築を


ーー最後にRENIさんの今後の展望についてお願いします。

グッズの販売ドメインを軸に、企画製造・物流在庫管理・販売管理・収益管理など、音楽業界のMDをどんどんDXしたいと思っています。EC事業を起点にすることで、デジタルドリブンな視点でサプライチェーン全体を構築し直すことができると思っています。デザインされた仕組みに基づいて業務運営がなされることにより、各領域において健全な競争が促され、結果的に音楽業界に関わる人全員がWin-Winになると信じています。この業界においてはまだ誰も真剣に考えていない課題だと思いますし、現在のRENIのポジションだからこそできることだという使命感を持っています。