E3代表・大津が、コラム形式でE3についての思いや採用市場の動向などについて語ります。今回は、E3を立ち上げるにあたっての背景を改めてお話します。
E3はエンジニアのためのコミュニティプラットフォームとして、私が独立して立ち上げました。E3に参加されている皆さんはご存知だと思いますが、もともと私はPE-BANKという会社で働いていました。これまでSES(システムエンジニアリングサービス)に感じていた2つの課題意識が独立の動機です。
1つ目はエンジニアに向き合ったサポートです。PE-BANK社は、過去現在他社に比べると共済会など営業面以外のサービスも充実しているほうではあります。
ただエンジニアが本当に必要とするものは他にあるかもしれない、本質的にエンジニアの自己実現のために寄り添いたい、と考えました。
2つ目はしっかりと採用市場、業界の動向を抑えるマーケット感覚をエンジニアが持つことです。そのサポートができないかと考え、E3ではmeetupや企業インタビューのコンテンツなど、企業側の視点を届けていこうとしています。私が一人一人と必ず面談させてもらうのも、お人柄を知っておかないとサポートできないこともあるからです。
E3では仕事の紹介だけでなく、エンジニアのライフプランをサポートしたい
多くの人材紹介エージェントでは、仕事の紹介をしてもその後のケアがしっかりできていないのではと感じていました。例えばエンジニアの節税対策や資産計画、キャリアプランです。またフリーランスの形態で何歳まで働くか漠然と考えているエンジニアの方もおられました。
ライフプランやお金についてはファイナンシャルプランナー(FP)に相談できますが、ほとんどのFPは金融機関付きなんです。銀行や証券に勤めながら自分の仕事に役立てていることが多い。フリーのFPの人でも保険会付きが多いんですよね。
E3では税理士さんへの相談やセミナーを定期的に開いていますが、もっとこういうチャネルを増やしたいと思っています。
E3の理想形は、エンジニアがスキル・知識を深めたり、「こういう働き方をしたい」「こう生きていきたい」という思いを叶えられるような色々なサービスやコンテンツを用意して、必要なものにお金を払う収益モデルです。エージェント的な仕事紹介はあくまでE3の側面の1つと考えています。報酬をもらわないと生きていけませんから、その中でどんな仲間を作るかとか、税金を収めなきゃいけないとか、資産形成はどうするかとかそういった課題に対応できるようにしてきたい。
メンタルヘルスケアもその1つです。メンタルヘルスケアは「cotree(コトリー)」などのサービスがありますが、エンジニア界隈は心のケアが必要な人が多い印象があるので、こういったこともしていきたいですね。
過去の人材紹介の仕事では器物破損、失踪した人も…
人材紹介のエージェントとして何千人という人と話をしてきましたが、いろいろなトラブルがありました。
例えば被害妄想が強くて常駐先の人を恨んで器物破損をしてしまった人がいました。客先から連絡があってその日に退場……となってしまいびっくりしたんですが、事を荒立てないように当人には「いったん今日は帰りましょう」と伝えました。メールや電話ではなく、対面でしっかり話をしたほうが上手くまとめられると思い、対面で話そうと終電間際にその人の自宅近くまで行きましたが、結局会ってはもらえませんでした。ただ連絡はとれて、自宅近くまで来ていたことが、結果的に多少なりとも気を静めることに繫がったのだと思いました。
あとは客先のデータが入ってるパソコンを持ったまま失踪した人もいました。登録されていた住所には別人がいて、後から事業の失敗でどうやら借金を抱えていたようだったことが分かったり……。
他にも客先から「出勤してこない。連絡もつかない」と連絡が来て、「これはまずいぞ」と警察と一緒に自宅のドアを開けて押し入ったことがありました。中の空気がひんやりして誰もいなくて、ゴミが散乱していて何事かと思ったんですが……結局入れ違いで出勤していた、というオチでした(笑)。本人に何事もなく良かったんですが。
E3ではエンジニア一人一人に向き合って仕事のサポートがしたい
人材紹介の仕事をしていると、いろんな個性を持った方にお会いします。そんな中、他のエージェントに引き継ぎをすると「大津さんがうまく調整していたんですね。なかなか手こずってしまいました」と後から連絡をもらったことがあります。僕からするとそのエンジニアの方が特殊なのではなく、エージェントの捉え方の問題なのではと考えました。
得てしてエージェントはエンジニアの年収や杓子定規なエンジニア像にはまりがちです。この人は経験があるから売れる・売れないとか、本人が話す仕事の希望や経歴に書いてあるプログラミング言語などの情報だけで人を判断してしまうエージェントもいます。でもそれではダメで、そのエンジニアの本質的な部分に関心を持って、対話をしていくことが重要だと思っています。求人と応募者のマッチングだけなら多くの人ができる仕事だと思うんです。
その人から「こうしたい」という意思が出てこない場合はお膳立てをしなきゃいけない。そうして話をして、「あなたの個性、私は良いと思ってるよ」と接する。その人の人間性に関心を持って付き合っていれば、トラブルさえも面白く受け止められるし、そのエンジニアが価値を発揮できる、どんなスペシャリティを持っているかも分かってくるようになります。その結果、クライアントの企業さんも満足してもらえる。そうやってエンジニアの活躍できるところを探して、できれば人生全体を支えることが、本当の意味での「エージェント」の仕事なんじゃないか。そういう仕事がしたくて、私はE3を創業したんです。